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理事長就任のご挨拶

日本消化器癌発生学会理事長 三森功士2023年11月23日
一般社団法人
日本消化器癌発生学会
理事長 三森功士

平素より、日本消化器癌発生学会の活動にご理解、ご協力を賜り、深く感謝申し上げます。

さて、私儀、三森功士は2023年11月23日の理事会において、伝統ある本学会の第6代理事長を拝命いたしました。浅学非才の身で甚だ恐縮ではございますが、これから一生懸命尽力させていただけたら幸甚でございます。

本学会は、「消化器癌の発生と進展の解明」を目的として、1989年に日本消化器癌発生研究会として発足し、1997年には現在の日本消化器癌発生学会となりました。初代大原 毅先生、第2代杉町圭蔵先生、第3代上西紀夫先生、第4代前原喜彦先生、第5代島田光生先生と、錚々たるレジェンドが理事長を歴任され大きく発展して参りました。2017年1月より一般社団法人と成り昨今の国内外における大きな社会変革に柔軟に対応しつつ、臨床と基礎の融合する勉強の場として遍く衆知されています。

本学会の起源と特徴は、初代理事長 大原先生の唱えられた『比較消化器癌発生学の尊重』にあります。すなわち分野が細分化され多様化した消化器癌の研究について、包括的あるいは俯瞰的に取り纏め比較検討することで、癌種を横断して幹となる事実、あるいは逆に癌腫それぞれの真実を見いだすことを旨としています。まさに今社会が求めているダイバーシティとインクルージョンという概念に重きを置きつつ消化器癌の発生または癌進展機構の解明を目指す学会です。その研究を実現するために、本学会では臨床系(外科、内科)、病理、生化学など各分野にわたる幅広い横断的な研究者がバランス良く集い議論を行って参りました。

しかしながら、世界における科学研究の進化のスピードはわれわれの想像以上に速く、内容は先鋭化してきています。文部科学省科学技術・学術政策研究所は「科学技術指標2022」を発表し、世界的にインパクトのある自然科学分野の論文数で、日本の地位はこの20年あまりの間に、4位から10位に陥落。論文のシェアは1位の中国が27%、アメリカが2位で25%であるのに対し、日本はたったの1.9%と国内の科学技術力の低下に歯止めがかからない衝撃的な事実が報じられました。われわれは別にサボって居たわけではありません。諸外国がわれわれよりも効率よく頑張っているのです。先般、日本医学会連合 専門医等人材育成検討委員会より『医学系の研究力向上の課題』があげられました。もちろん専門医制度は素晴らしく必須のシステムではありますが各専門医の取得と維持にかかる労力と時間のため臨床医の研究離れは加速しており、その改善策の構築は喫緊の課題となっています。すなわち、世界レベルのがん基礎研究の裾野を広げ、患者還元のための臨床研究の展開も必要です。このためには臨床と基礎との協力は必須であり両者を結ぶ人材と機会は必要です。日本消化器癌発生学会は、その絶好の機会であると考えております。

さらに昨今は、これまでにないスピードで新しい分野が興り、それぞれの分野のエキスパートの参加が必須です。2023年末現在、臨床に近い橋渡し研究の観点からは、がんゲノム医療、大規模臨床試験、免疫学と免疫療法、分子標的療法、リキッドバイオプシー。基礎解析のブレイクスルーとしては、全ゲノムシーケンス解析、エピゲノム・エピトランスクリプトーム解析、(空間的)シングルセル解析、オミックス解析。オルガノイド/PDXなどのヒト化がんモデル開発、マイクロバイオーム解析。さらに数理統計学の観点からは、実世界のエビデンスと実世界のデータ、(生成)AI/情報解析、シミュレーション、バイオイメージングなど、取り組むべきテーマを挙げれば枚挙に暇がありません。

私の考えるこれからの本学会のミッションは、島田前理事長の炯眼と熱い思いより、(1)若手研究者の更なる発掘・育成と支援、(2)学会のさらなる財政の健全化、(3)学会の英語化とグローバル化、(4)女性研究者の育成と支援を受け継いで参ります。さらに、(5)トップレベルの基礎研究者の参加を促す、(6)SNSによる世界への発信、(7)若い臨床医の基礎研究教室へのリクルート、基礎研究者の臨床研究との共同研究体制構築の斡旋、などと愚考しています。

会員の皆様、ならびに本学会の活動にご期待を寄せていただいている皆様におかれましては、さらなるご理解、ご協力、ご支援を賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。


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